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Writer's pictureMayumi Kuze

ロー対ウェイド判決で明らかになったアメリカ内の女性への態度や権利への危機

Updated: Sep 15, 2022



こんにちは!

toriaezu.メンバーのまゆみです!


私はアメリカで女性の人権が後退する日が来ようとは思ってもみませんでした。今日は、私が最近衝撃を受け、失望と強い怒りを覚えたアメリカのニュースについて書きます。


ご存知の方も多いかと思いますが、先月6月24日、アメリカの連邦最高裁判所が、人工妊娠中絶の規制を違憲と定めた1973年の最高裁判決である「ロー対ウェイド判決」を覆しました。これにより、州によって妊娠中絶が違法となったり、規制の対象になることになります。今回の最高裁の影響を直接受けるのは、保守派の影響が強い半数以上の州に住む女性、また性自認は女性でなくとも妊娠機能のある人たちです。私はこの判決に、当初耳を疑う思いであり、そして信じられないほどの怒りを覚えました。


まず、なぜこの判決が大きな影響力を持つのかですが、自分が住む州で中絶が禁止されれば、望まない妊娠をしても、他の州に行かない限り中絶を受けられないことになります。そしてこれは、特に低所得者層など、仕事を休むのが難しかったり、移動や宿泊にかかる費用を捻出するのが難しかったりする人々や、家族の理解が得られない人々にとって、大変な負担になります。


50年にわたり、女性の権利とされてきた妊娠中絶が保障されなくなることを意味するこの判決は、アメリカ、そして世界に大きな衝撃を与えました。アメリカでは、24日の判決以降、最高裁に対する抗議活動が続いています。


アメリカでは、中絶の賛否が長らく国を二分する議論を引き起こしてきました。私含めリベラル派の人は、子供を産むか産まないかを決めるのは女性にとって人生と心身の健康を左右する大切な選択であり、その選択の自由が与えられることは人権と信じています。一方で保守派の人々、主にキリスト教信者の中でカトリック教徒の人々は、胎児は受精卵の時から人間であると考え、中絶を殺人と捉えます。そのため、中絶を禁止したがるのです。


また、この議論は二元的ではなく、「pro-choice」と呼ばれる中絶支持派と、「pro-life」と呼ばれる中絶反対派の中にも、様々な意見を持つ人がいます。例えば、中絶自体は支持していても、妊娠後期の中絶には反対の人や、性的暴行・近親相姦などによる妊娠や、児童が暴行により妊娠したの場合にのみ中絶が許されていると考えている人もいます。これらの異なる意見は、州の法律にも反映されています。7月4日には性的暴行により妊娠した10歳の少女が、自身の住むオハイオ州では中絶を受けることを禁止されたため、他州に行かなければいけなかったという事件があり、「暴行を受けた10歳の少女にも、産むことを強制するのか」と、国民の間で怒りが広がりました。


さらに、この判決が出る直前の2022年5月に行われた調査では、アメリカの有権者の63%が、最高裁が妊娠中絶の権利を守ることを希望しています。つまり、最高裁の判決は、国民の多数の意見と反するものだったのです。これは、最高裁が信頼や支持を失う原因となります。

 

ここまで、アメリカの状況を淡々と書いてきましたが、ここからは私がなぜ、このニュースに衝撃と怒りを覚えているかを書きます。そして、それぞれのポイントについて、アメリカの中絶支持派が抗議活動の中でよく使っているキャッチフレーズを紹介したいと思います。



まず、一番よく聞かれるキャッチフレーズで、SNSでのタグとしても使われている、 “Bans off my bodies” =「私の体に口出ししないで」。


“Hands off my bodies” = 「私の体に触らないで」のもじりでもあるこのフレーズは、多くの女性たちの気持ちを代弁しています。


もちろん、政治的発言や信仰の自由は大切ですし、中絶を殺人とする考え方もわからなくはないのですが、一部の国民が彼らの信仰に基づいて、アメリカの全ての女性の権利を奪うのはおかしいと思わずにはいられません。


また、 “No uterus? No opinion.” =「子宮の持ち主じゃない?それならあなたは黙っていて。」


アメリカの最高裁判事は9人のうち7人が男性です。今回、中絶の規制は違憲でないとした判事と、この判決を黙認した判事合わせて6人のうち、5人は男性でした。望まない妊娠をし、特にパートナーからのサポートがない場合、妊娠で将来を制限されるのも、妊娠や出産、育児等で心身に負担を強いられるのも女性たちであるのに、彼女たちの人権と未来を、男性が主となって制限したということに、大きな反感を覚えます。


そして、中絶反対派にもある程度理解してもらえそうなのが、 “You can’t ban abortion. You can only ban safe abortion.” =「中絶を禁止することはできない。禁止できるのは安全な中絶だけ。」です。


今回の判決の影響を一番受けるのは、保守派の州の中でも、家族からのサポートがない、費用が工面できない、仕事を休めないなど、何らかの理由で他州まで行って手術を受けることが難しい女性たちです。もし、それでも中絶を受ける必要がある場合、違法な医療行為をしている組織で、危険な中絶を受けることになる可能性が増えます。所得や、住む州による格差もさらに拡大するのです。


最後に、 冒頭で触れた通り、この判決の影響を受ける「当事者」はいわゆるシスジェンダー・異性愛者の女性だけではなく、妊娠する可能性のある体をもつすべての人です。また、それ以外の人にとっても、自分の家族、友人、パートナーなどに、必ずといっていいほど、この問題の当事者が含まれるはずです。それほど大きな問題なのです。


また、保守派とリベラル派に二分されているこの論争ですが、私にとってこのことは政治問題ではなく、ひとえに人権問題です。アメリカの人権の状況が50年前と比べ逆戻りしてしまったことに、とても悲しく、腹立たしい思いでいっぱいですし、怖くもあります。


しかし、日本でも、母体保護法という法律で、中絶をするには、レイプなどを例外に、配偶者の同意が求められるとあり、このことは国際機関からも批判を受けています。また、日本の性的合意年齢は13歳という恐ろしい数字です。先進国で、これほど性的合意年齢が低いのは日本だけです。


このロー対ウェイド判決を受け、日本の法律や、日本の女性・児童の人権についても、考えなければいけないと改めて感じました。


皆様はどう思われますか?ぜひコメントやDMで教えてください。

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