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  • toriaezu. ストーリーテラーチーム

文化の盗用とは?

Updated: Sep 15, 2022




キム・カーダシアンが自身の下着ブランドを「KIMONO」と名付けたことや歌手のケイティ・ペリーが着物の衣装を着てAMA授賞式に参加したことなどが話題になり、度々聞くようになったかもしれない「文化の盗用」という単語。そもそも文化の盗用とは何なのか。


文化の盗用(cultural appropriation)の定義は「とある文化圏の許可なしに他の文化圏の人間が勝手に何かを流出したり、奪うこと」となっている。詳しく分析すると文化の盗用の定義には二つの種類があり、人類文化学的な定義、そして社会運動を通して使われるようになった定義にわかれている。一般的な定義はどちらかというと、人類文化学的な定義とされており、1945年に人類文化学者アーサー・クリスティーによって発表されたものだ。


1970年代後半になり植民地主義との関連性が注目され始め、1980年代にようやく一般的に使われるようになり、社会運動における定義が浮上した。社会的少数派・少数民族の文化・習慣・風習に対して理解もなく勝手に使う場面を強調した定義として「奪う」ニュアンスが強くなったようだ。


社会運動における定義が生まれた背景としては、アメリカ社会における白人と黒人、また白人と先住民族などの権力の差が注目されたのが変化の大きな要因とされている。アメリカでは公民権運動や女性の権利運動、そしてLGBTQ+の権利運動が1960年台から1970年台にかけてアメリカで盛んに行われ、社会組織に大きな影響力を及ぼしていた。そこで、白人・異性愛者・男性と言った、三つのアイデンティティーを持った人を基準とし、社会が作られていることに人々がようやく気付き社会的少数派のグループの権限を意識した運動が始まった。


しかし、文化の盗用という概念はあまり日本人に浸透していない。その理由はどこにあるのだろうか。一つの理由は、日本人の中にある白人への憧れかもしれない。私達が調べたところによると、これは明治政府が行った脱亜入欧が大きく関係しているようだ。脱亜入欧とは、明治時代の日本において、「後進世界であるアジアを脱し、ヨーロッパ列強の一員となる」ことを目的としたスローガンや思想のことだ。この政策は日本人の中で「経済の面でも文化の面でも先をいく欧米人、白人のようになりたい」という概念を作り出した。このように白人に憧れをもったり、西欧社会に劣等感を感じる日本人の意識は今でも日本人の中に強く残っているのかもしれない。だからこそ海外の人が日本文化を楽しんでいたりすると、自国の文化が認められたように感じるのではないかと考えた。


二つ目の理由は、日本人のマイノリティ意識の薄さ。文化の盗用は、マジョリティとマイノリティの間に発生する、いわば強いものと弱いものの力関係が原因で発生する。そのため、日本国内は他国に比べて移民が少ないことや過去に名誉人種感を体験しているからこそ、日本に住んでいる日本人の中では、白人に対するマイノリティ意識は生まれづらく、日本では文化の盗用への反応が薄いのかもしれない。また、日本人のマイノリティ意識の低さはアパルトヘイトの歴史にも関連している。アパルトヘイトとは南アフリカ共和国で約50年間実施されていた有色人種を総じて差別し、白人を最も優位にするために行われた。日本は南アフリカに対して経済支援を行ってきたため、1970年頃から日本人は白人と同等に扱われ名誉人種として白人と同等の権理を獲得していたようである。この名誉人種感というものが日本人に白人と同じ排他的権利を持ち合わさせ、他の有色人種に比べ、白人に対する日本人のマイノリティ意識が薄いのだと考えられた。


ディスカッションではどんな基準を持って「これは日本の文化を盗用している・していない」と判断したいかなどを筆頭に様々なトピックについて話し合った。

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